元の言語のページへ戻りました

本アプリケーションノートでは、適切なライブラリを作成した上で、ラマン分光法を用いて異なる2社が製造したイソプロピルアルコールを迅速かつ非破壊的に識別する手法を示しております。携帯型ラマン分光計Mira M-1による測定はサンプルの前処理を必要とせず、即座に明確な識別結果を得ることが可能です。

イソプロピルアルコールのような有機溶剤は、多くの美容・化粧品、塗料、香料の製造、そして合成反応(特に医薬品用途)に必要とされています。

本測定では、異なる2つの製造元からのイソプロピルアルコールサンプルをラマン分光測定を行い、スペクトルの違いを調査いたしました。予想外にも、スペクトルにはいくつかの差異が認められ、それにより製造元ごとの識別が可能であることが示されました。

すべてのスペクトルは、ラマン分光計 Mira M-1 を用い、自動取得モード(すなわち、積分時間が自動的に設定されるモード)で測定されました。測定には785 nmのレーザー波長および軌道ラスタースキャン技術(Orbital Raster Scan Technologie, ORS)技術を使用しました。イソプロピルアルコールのサンプルは、Mira M-1 のバイアルホルダーアタッチメントを用いてバイアル内で測定されました。

2社のイソプロピルアルコール製品が評価されました。ラマンスペクトルには、明確な違いが見られ、これはサンプルは何らかの不純物が含まれている可能性を示唆しております。この測定結果は、ラマン分光法による識別が可能であることを示しております(図1を参照)。

図 1. イソプロピルアルコール(製造元1および2)のスペクトルとエチルアルコールのスペクトルの重ね合わせ

1400–1470 cm⁻¹のピークは、δ(CH₂)およびδ(CH₃)の非対称振動に由来しています。600–1300 cm⁻¹の範囲には、υ(CC)に由来する脂肪族鎖の振動が見られ、いずれのイソプロピルアルコールサンプルにもこれらのピークが確認されます。

一方で、883、1049、1095、1276 cm⁻¹のピークに注目すると違いが現れます。文献によれば、これらのピークはサンプル中にエタノールが存在することを示唆しており、図2に示すように、この違いから両サンプルを識別することが可能です。

図 2. イソプロピルアルコールスペクトル間の違い

2つのイソプロピルアルコールサンプルのスペクトルを比較すると、製造元2の試料にはエチルアルコールが含まれていることが明らかとなりました。Mira M-1を用いることで、製造元の異なるサンプルを識別することが可能であり、本ラマン分光計が溶媒やアルコール類といった受け入れ原料の識別に適していることが実証されました。

お問い合わせ

メトロームジャパン株式会社

143-0006 東京都大田区平和島6-1-1
東京流通センター アネックス9階

お問い合わせ