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AN-PAN-1067

2024-06

銅めっきプロセスにおける有機添加剤のオンライン分析


概要

プリント基板(PCB)の製造の需要が高まっています。これには、PCB製造プロセスを最適化する技術の探求し、効率を最大限に高め、優れた製品品質を実現する必要があります。

高品質な製品を確保する上で、電気銅めっき浴からの銅の析出は、PCB製造の重要な段階であり、同様に有機添加剤の含有量をモニタリングすることは、必要不可欠です。

これは、サイクリックボルタンメトリーストリッピング(CVS)などの分析技術を使用して実現されます。

CVS測定により、添加剤濃度(例:光沢剤、抑制剤、平滑剤など)を正確に測定および制御が可能となり、最適なめっき条件を維持され、製造プロセスの全体的な効率と信頼性が向上します。

このプロセスアプリケーションノートは、2060 CVS プロセスアナライザーを使用して、PCBのための電気銅めっきプロセスをオンラインで最適化する技術を紹介します。このプロセスアナライザーは、銅の析出に対する一貫した品質と正確な制御を実現します。


はじめに

携帯電話や小型コンピューターなどの電子機器が小型化し、より多くの機能を搭載するにつれて、PCBは利用可能なスペースを最大限に活用する必要があります。

より多くの配線を詰め込むために、新しいPCBレイアウトは、より短いパスで部品を接続する、より多くの小さなビアを特徴としています。しかし、このレベルの複雑さを実現するには、非常に精密な製造技術が必要です。

ドリル穴と基板表面の銅めっきは、PCB製造における重要な生産ステップです[1]。めっき液は、銅、硫酸、塩化物、および有機添加剤など、いくつかの主要成分の常時モニタリングを必要とします。これらの添加剤には、光沢剤、抑制剤、平滑剤が含まれ、それぞれが目的の物理的特性と仕上げを実現する上で重要な役割を果たします。

これらの添加剤の濃度を狭い範囲内で維持することが重要です。このため、めっきプロセスを正しく機能させるたには、正確な銅めっき浴のモニタリングが不可欠です。

銅、硫酸、および塩化物の濃度は滴定によって測定できますが、有機添加剤を分析するための業界標準アプローチはCVSです。この技術は、添加剤が銅めっきプロセスにどのように影響を与えるかを分析して、その濃度を決定します。これは、溶液中の添加剤の量が銅めっき反応速度に影響を与えるためです。

銅めっき浴中の各有機添加剤は、最終的な銅めっき層の形成に特定の役割を果たします。例えば、抑制剤は、銅の析出速度を直接低下させ、より整然とした析出と緻密な粒子構造を実現します。(図1、左)。

対照的に、抑制剤で飽和した溶液に光沢剤を添加すると、この効果をわずかに打ち消し、銅の析出を増加させます(図1、右)。光沢剤の目的は、等軸(非方向性)粒子の成長を促進することです。

平滑剤は、抑制剤よりも効果が低いものの、その表面を滑らかにすることで最終的な銅めっき層に影響を与えます[2]。

Left: Suppressor effect. Right: brightener effect.
図1. PCBの銅めっきにおける有機添加剤の影響。左:抑制剤の効果。右:光沢剤の効果。すべての曲線図例は、メトロームvivaソフトウェアから引用しています。
2060 CVS Process Analyzer from Metrohm Process  Analytics.
図2. メトロームプロセスアナリティクスの2060 CVS プロセスアナライザー

従来、CVS測定はラボで行われ、サンプルは手作業でめっき浴からサンプリングしていました。このアプローチは高精度と高感度を提供しますが、プロセス状態の一部始終に過ぎません。

この限定的な結果のために、サンプリング間に発生する変化を完全に見逃すことがあります。さらに、不完全なサンプリングや汚染などの要因により、手作業でのサンプル分析が結果にばらつきをもたらすことがあります。

オンラインプロセスアナライザーは、プロセス環境内で直接CVS測定を実行することにより、これらの課題解決に貢献します。例えば、2060 CVS プロセスアナライザーはリアルタイムモニタリングを提供し、めっき浴を継続的に観察することで測定されているパラメーターの急速な変化をいち早く検出できます。


アプリケーション

Close-up of the electrochemical cell in the 2060 CVS  Process Analyzer.
図3. 2060 CVS プロセスアナライザー内の電気化学セルのクローズアップ写真

2060 CVS プロセスアナライザーは、電気銅めっき浴のモニタリング目的で、電気銅めっき浴内の有機添加剤(例:光沢剤、抑制剤、平滑剤)をオンラインで分析するのに優れた選択です。

CVS測定では、ウェットパートキャビネット内に設置された3電極システムを備えた電気化学セル(図3)を使用します。これらの電極の中に、プロセスアナライザーによって正確に管理されるPt(白金)回転ディスク電極(作用電極)があります。CVS技術には、Pt(白金)回転ディスク(作用電極)で特定の電流電位変化をモニタリングすることが含まれます。この波形は、銅のめっきとその後めっきされた銅の剥離をシミュレートします。このプロセス全体を通じて、電極を流れる電流電位が連続的にモニタリングされます。銅の剥離ピークに生じる変化を観察することで、めっき浴内の有機添加剤に関する有効濃度を推定することが可能です。


備考

さらに、メトロームプロセスアナリティクスの2060 TI プロセスアナライザーを使用して滴定および吸光度測定により、銅、硫酸、および塩化物の濃度を測定し、めっき浴の健全性を完全に把握することができます。


結論

結論として、高品質なPCB製造を実現するには、めっき溶の傾向をモニタリングしながら、正確な銅めっきをする必要があります。従来のラボベースのCVS測定は精度が高いものの、プロセス状態の一部始終のみを提供します。

2060 CVS プロセスアナライザーは、PCB製造における高品質な銅の析出に不可欠な有機添加剤(例:光沢剤、抑制剤、平滑剤)を正確にモニタリングおよび制御することで、電気銅めっきプロセスの最適なパフォーマンスを実現します。


参考文献

  1. The Influence of Copper Distribution on PCB Quality. Eurocircuits, 2022.
  2. Yen, M.-Y.; Chiang, M.-H.; Tai, H.-H.; et al. Next Generation Electroplating Technology for High Planarity, Minimum Surface Deposition Microvia Filling. In 2012 7th International Microsystems, Packaging, Assembly and Circuits Technology Conference (IMPACT); 2012; pp 259–262. https://doi.org/10.1109/IMPACT.2012.6420290.

オンラインプロセス分析の利点

  • コスト削減 - 廃棄物の最小化と添加剤使用の効率の最大化
  • 歩留まりのリスクを軽減 - 有機添加剤の一貫したモニタリング
  • めっきパフォーマンスの最適化 - 有機添加物の濃度をオンライン分析で正確に分析・定量し、要求される狭い範囲内に維持
  • 省人化 – ラボでCVS測定を行うための熟練技術者の必要性を低減
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