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フルーツジュースは爽やかな風味と栄養価の高さ、そして即効性のあるエネルギー源として知られ、多くの量が消費されています。フルーツジュースを製品として考えたときに甘い飲料であるため、製品中の糖の含有量は非常に重要なパラメータとなります。中でも、フルクトース、グルコース、スクロースの含量は品質管理する上で非常に重要な糖類とされています。従来のラボ分析で果汁中のこれらの糖類を測定するには液体クロマトグラフィーに加え、屈折率測定が行われます。このように分析手法が複数ある場合には、全ての分析に技術や時間を必要とする上、それぞれの分析装置を必要です。
近赤外分析計(NIR)は、果汁中のグルコース、フルクトース、スクロース、Brixを1分以内に同時測定できる分析技術です。さらに、化学薬品は不要で、サンプルの前処理も不要です。

Figure 1. OMNIS NIRアナライザー と OMNIS サンプルロボットS ピペッティングシステム付きPick&Place

グルコース(1–8 g/100 mL)、フルクトース(0~8g/100mL)、スクロース (1–8 g/100 mL)の範囲で計15サンプルを用意し、定量分析のための検量線モデルを作成しました。サンプルはメトロームのOMNIS NIR Analyzer Liquid(1000–2250 nm)を用いて透過モードで測定しました。光路長2 mmのフローセル用キュベットおよびフロースルーセル用ホルダーを使用しました
液体移送には、OMNIS Sample Robot S Pick&Placeに内蔵されたたペリスタルティックポンプを使用しました。

6種類の異なるフルーツジュース(各種オレンジジュース、パイナップルジュース、ミックスフルーツジュース、アップルジュース)の試料を、このセットアップを用いて測定しました。
糖濃度(グルコース(%)、フルクトース(%)、スクロース(%))およびBrix(°Brix)は、前述の検量線モデルを用いて予測しました。 ジュース試料中の各種糖濃度の測定には、イオンクロマトグラフィ(IC)を使用しました(AN-P-072に準拠)。また、デジタル屈折計を用いてBrixを測定しました。 NIRスペクトル取得と検量線モデル開発には、OMNISソフトウェアが使用されました。

得られたVis-NIRスペクトル(Fig. 2)を用いてグルコース、フルクトース、スクロース、Brixの検量線モデルを作成しました。その検量線モデルは相関図および標準誤差等の統計値を用いて評価しました。
相関図を用いて予測モデルの品質を評価したところ、Vis-NIR予測値と参照値との間に非常に高い相関があることがわかります。それぞれの統計値(Figure Of Merit, FOM)は、ルーチン分析における予測値の期待精度(Fig.3-6)を示します。

Figure 2. OMNIS NIRアナライザーで測定したVis-NIRスペクトル
Figure 3. フルクトースの検量線モデルの相関図と各統計値
R2 SEC (%) SECV (%)
0.999 0.06 0.07
Figure 4. グルコースの検量線モデルの相関図と各統計値
R2 SEC (%) SECV (%)
0.981 0.21 0.28
Figure 5. スクロースの検量線モデルの相関図と各統計値
R2 SEC (%) SECV (%)
0.995 0.14 0.18
Figure 6. Brixの検量線モデルの相関図と各統計値
R2 SEC (%) SECV (%)
0.999 0.08 0.12
Figure 7. NIR spectra of fruit juice samples analyzed on an OMNIS NIR Analyzer Liquid.

市販フルーツジュースを試料として、図1に示したOMNIS Sample Robotセットアップを用いて、NIRスペクトルを取得しました (Figure 7) 。そのスペクトルを先に述べた検量線モデルを用いて評価しました。測定した市販フルーツジュース(1〜6)のグルコース、フルクトース、スクロース、およびBrixの評価結果をTables 1-4に示します。

Table 1. 近赤外分光法(NIR)によるBrix予測値と参照法(屈折計)による測定値の比較
サンプル番号(フルーツジュース) Brix 屈折計 (°Brix) NIR予測値 (°Brix)
1 11.32 11.11
2 11.32 10.96
3 12.59 12.68
4 11.32 10.94
5 11.63 11.79
6 11.06 11.74
Table 2. 近赤外分光法(NIR)によるフルクトース濃度予測値と参照法(IC)による測定値の比較
サンプル番号(フルーツジュース) フルクトース (%) (IC) NIR予測値 (%)
1 2.47 2.27
2 2.29 2.79
3 2.47 2.73
4 2.22 2.55
5 4.08 3.09
6 5.70 5.80
Table 3. 近赤外分光法(NIR)によるスクロース濃度予測値と参照法(IC)による測定値の比較
サンプル番号(フルーツジュース) スクロース (%) (IC) NIR予測値 (%)
1 3.7 2.6
2 3.86 4.21
3 5.33 4.77
4 3.95 3.33
5 3.09 2.94
6 1.04 3.29

 

Table 4. 近赤外分光法(NIR)によるグルコース濃度予測値と参照法(IC)による測定値の比較
サンプル番号(フルーツジュース) グルコース (%) (IC) NIR予測値 (%)
1 2.23 2.12
2 2.05 2.21
3 2.86 2.72
4 1.89 2.14
5 3.38 2.65
6 2.35 2.92

本アプリケーションノートでは、近赤外分光法を用いたジュース中のグルコース、フルクトース、スクロース、Brixの定量分析の可能性を示しました。

NIR分光法を用いることで、誰でも簡単に測定でき、化学薬品・サンプル調製を必要とせず、迅速かつ高精度な結果が得られます。したがって、NIRSは液体クロマトグラフィーのような従来の手法に代わる手法として適しています。(Table 5)

Table 5. ジュース中の各種糖成分における分析時間の概要

パラメータ Method Time to result
グルコース、フルクトース、スクロース HPLC ∼5 min (前処理) + ∼40 min (HPLC)
Brix 屈折計 1 min
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