近年、燃料による環境負荷低減を大きく推進する目的で燃料品質の向上が求められています。これには、エンジンをより効率的にすることと、燃料中のオクタン含有量を増加させて、より高い圧縮エンジンを利用できるようにすることが必要です。
ガソリンの重要な品質パラメータ、すなわち、研究用オクタン価(RON、ASTM D2699-19)、モーターオクタン価(MON、ASTM D2700-19)、アンチノック指数(AKI)、芳香族含有量(ASTM D5769-15)、および密度の決定には、従来、いくつかの異なる分析方法が必要であり、これらの分析には手間がかかり、教育された分析者が必要となります。このアプリケーションノートでは、可視及び近赤外スペクトル領域(Vis-NIR)の測定が可能なXDSラピッドリキッドアナライザーを用いて、ガソリンのマルチパラメータ分析を行うための費用効率の良い高速分析が可能なことを実証しました。
XDS ラピッドリキッドアナライザー(RLA)を用いて、ガソリンサンプルを全波長領域(400~2500nm)にわたって透過測定を行いました。温度
コントロール機能を内蔵したサンプルホルダーを用いて、高精度の再現性の良いスペクトル測定を行いました。ガソリンサンプルは光路長8mmの使い捨てバイアルを使用し、サンプル間の洗浄作業は不要としました。メトローム社Vision Airコンプリートソフトウェアを用いて、スペクトル測定と検量線モデルの解析を行いました。
| 装置 | メトローム製品番号 |
|---|---|
| XDS RapidLiquid Analyzer | 2.921.1410 |
| Disposable vials, 8 mm diameter, transmission | 6.7402.000 |
| Vision Air 2.0 Complete | 6.6072.208 |
測定されたVis-NIRスペクトル(図2)を用いて、いくつかの主要なガソリンサンプルの測定項目の検量線予測モデルを作成しました。各項目の検量線予測モデルの精度は、検量線予測値とリファレンス値(従来分析法)の相関関係を示す統計値(FOM)で評価しました。それぞれの統計値(FOM)は、日常分析時の予測精度を示します。
Result RON value
| 統計値 | 数値 |
|---|---|
| R2(寄与率) | 0.989 |
| 検量線における標準誤差(SEC) | 0.26 |
| 交差検定の標準誤差(SECV) | 0.29 |
Result MON value
| 統計値 | 数値 |
|---|---|
| R2(寄与率) | 0.889 |
| 検量線における標準誤差(SEC) | 0.50 |
| 交差検定の標準誤差(SECV) | 0.53 |
Result aromatics content
| 統計値 | 数値 |
|---|---|
| R2(寄与率) | 0.974 |
| 検量線における標準誤差(SEC) | 0.97 vol% |
| 交差検定の標準誤差(SECV) | 1.07 vol% |
Result density
| 統計値 | 数値 |
|---|---|
| R2(寄与率) | 0.973 |
| 検量線における標準誤差(SEC) | 0.0021 kg/L |
| 交差検定の標準誤差(SECV) | 0.0023 kg/L |
Result AKI value
| 統計値 | 数値 |
|---|---|
| R2 | 0.945 |
| Standard error of calibration | 0.45 |
| Standard error of cross-validation | 0.46 |
このアプリケーションノートでは、RON、MON、AKI、芳香族含有量、密度の測定が近赤外分析(NIR)法で可能であることを示しました。従来の湿式分析法(表7)と比較すると、結果が得られるまでの時間が近赤外分析(NIR)法で大幅に短縮され、1分以内の測定が可能な近赤外分析(NIR)の
有用性が明らかになりました。
| 項目 | 試験法 | 測定に要する時間 |
|---|---|---|
| RON | CFR エンジンテスト | ∼30 分/サンプル |
| MON | CFRエンジンテスト | ∼30 分/サンプル |
| AKI | CFR エンジンテスト |
∼30 分/サンプル |
| Aromatic content | ガスクロマトグラフィ | ∼45 分/サンプル |
最新の主要測定項目の検量線情報は下記のメトローム社のプリキャリブレーション情報をご確認ください: