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甲状腺ホルモンは甲状腺によって生成され、代謝や成長の調節に重要な役割を果たします。よう素はその構成要素として機能し、含まれるよう素原子の数によってホルモンの種類が決定されます。すなわち、チロキシン(T4)には4個、トリヨードチロニン(T3)には3個のよう素原子が含まれます。よう素原子の数は、甲状腺ホルモンの機能性にとって極めて重要です。レボチロキシンおよびリオチロニン(それぞれT4およびT3の合成ホルモン)は、甲状腺治療薬の主要な成分として用いられています。T4は生理活性が比較的低く、より活性の高いT3へ変換されることで効果を発揮します。したがって、甲状腺治療薬におけるヨウ素の正確な定量は、治療の有効性および安全性を確保するための極めて重要な品質管理項目となります。

米国薬局方(USP)のガイドラインに基づき、甲状腺製剤中の総よう素含有量をよう素酸塩(IO₃⁻)として間接的に定量するための堅牢な手法が導入されています。この分析には、884 Professional VAおよびMulti-Mode Electrode proが使用されます。

市販の甲状腺ホルモン錠剤には、100 μgのレボチロキシンと20 μgのリオチロニンが配合されています。

Figure 1. 884 Professional VA.

よう素のサンプル前処理および定量は、米国薬局方(USP)のモノグラフ「Thyroid Tablets」に準拠して実施されます。このプロセスでは、まず錠剤を乾式灰化し、有機結合されたよう素を遊離させた後、よう素酸塩(IO₃⁻)へと変換します。得られたよう素酸塩の含有量は、884 Professional VA(図1を参照)を用いた差分パルスポーラログラフィー法により測定されます。

  • 作用電極: Multi-Mode Electrode pro
  • 参照電極: Ag/AgCl/KCl (3 mol/L) 
  • 補助電極:  Platinum rod electrode
表1.よう素酸イオン(IO₃⁻)定量のためのパラメーター
パラメーター 設定
作用電極 DME
モード DP – Differential Pulse
開始電位 -0.8 V
終了電位 -1.5 V
電位ステップ 0.005 V
電位ステップ時間 1 s
パルス振幅 0.05 V
よう素酸イオン(IO₃⁻)のピーク電位 -1.18 V
図 2. 884 Professional VAおよびMulti-Mode Electrode proを用いた差分パルスポーラログラフィーによる甲状腺製剤中のよう素酸塩の定量

測定結果の算出は、米国薬局方(USP)のモノグラフ「Thyroid Tablets」に従って行われました。

表2.884 Professional VAおよびMulti-Mode Electrode proを用いたよう素定量結果
サンプル 錠剤あたりのよう素含有量 [μg] 回収率
錠剤 70.59 92.3%
72.55 μgを添加した錠剤 144.58 101.9%
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