AN-V-239
2024-04
LiFePO4電池内の鉄の化学形態解析
" Multi-Mode Electrode Pro " を用いたリチウム鉄リン酸塩中の Fe(II) および Fe(III) の同時定量
概要
リチウム鉄リン酸塩(LiFePO4、略してLFP)電池は、2000回以上の充放電に耐えられ、長寿命であり、過熱のリスクが低い安全性が高い電池です。LFP電池はリチウムイオン電池に比べてエネルギー密度はやや低いものの、高い放電レートが可能なため、電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電、非常用電源システムに最適です。リチウム鉄(II)リン酸塩は、LFP電池の正極材料として用いられています。LFPの特性評価や電池内の鉄の酸化状態のモニタリングは、電池の耐久性や容量、安全性といった性能に関わる重要なポイントです。さらに、化学組成の分析は電池研究に役立つだけでなく、環境に配慮したリサイクル技術の推進にも貢献します。これらは、電池技術の進展とクリーンエネルギーの普及を促進するために不可欠なものとなっています。
Fe(II)およびFe(III)のポーラログラフィー法による化学形態解析は、LiFePO₄の純度評価およびリチウム鉄リン酸塩電池の正極材料としての適性評価に適用できます。さらに、この手法は、複数回の充放電サイクル後の正極材料中におけるFe(II)およびFe(III)の濃度変化を調査することにも利用でき、電池の劣化挙動(エイジング挙動)の評価にも役立ちます。
サンプル
LiFePO4(純品)
測定
LFPサンプルは秤量後、脱気した希硫酸と混合し、85 °Cで15分間加熱した後、冷却します。その後、前処理されたサンプル溶液を、20 mLの脱気済み電解質を含む測定容器に添加します。測定は、Fe(II)およびFe(III)の標準溶液を用いた2回の標準添加法により行います。
パラメータ | 設定 |
---|---|
モード | DME |
開始電位 | 0.0 V |
終了電位 | -1.5 V |
掃引速度 | 30 mV/s |
Fe(II) のピーク電位 | -0.25 V |
Fe(III) のピーク電位 | -0.8 V |
電極
- Multi-Mode Electrode pro
測定結果
"vivaソフトウェア" は、データ変換の自動化や多様な形式での表示により、優れた汎用性と柔軟性を提供し、作業時間の短縮とエラーリスクの低減に貢献します。表2は、Vivaが試験対象材料に対する濃度単位(g/L から mg/g への変換)を容易に行う様子を示しており、結果の理解をサポートすることで、初心者のユーザーにも分かりやすくなっています。
サンプル | Fe(II) [g/L] | Fe(III) [g/L] |
---|---|---|
LiFePO4(前処理済) | 2.8 | 0.09 |
サンプル | Fe(II) [mg/g] | Fe(III) [mg/g] |
---|---|---|
LiFePO4 | 350 | 11 |