無電解ニッケルめっきは、優れた耐摩耗性および耐食性を有します。プリント回路基板の製造は、ENIG(無電解ニッケル・置換金)またはENEPIG(無電解ニッケル・無電解パラジウム・置換金)プロセスのいずれかによる無電解ニッケルめっきから始まります。無電解ニッケルめっき浴における安定剤濃度のモニタリングは、ニッケルの均一な析出および高品質な被膜を確保する上で極めて重要です。無電解ニッケルめっき浴中の三価アンチモン系安定剤の一般的な濃度は、約1 mg/Lです。
アノードストリッピングボルタンメトリーは、無電解ニッケルめっき浴中のSb(III)安定剤濃度をモニタリングするための迅速かつ堅牢な手法です。この測定は、作業電極・参照電極・補助電極を単一のセラミック基板上に一体化した複合センサー ”scTRACE Gold” を用いて行われます。このセンサーは、機械的研磨といった大がかりなメンテナンスを必要としません。本手法は、手動システムにも自動化システムにも適用可能です。
無電解ニッケルめっき浴液
図 1.
884 Professional VA:ボルタンメトリー分析用の全自動分析システム例
測定容器には、水、無電解ニッケルめっき浴液サンプルおよび電解液を加えます。三価アンチモン(Sb(III))の定量は、図1に示す884 Professional VAを用い、表1に記載されたパラメーターに従って実施されます。濃度の測定は、三価アンチモン標準添加溶液を2回添加する標準添加法によって行われます。
scTRACE Gold センサーは、測定の前に電気化学的に活性化させておきます。
| パラメーター | 設定 |
|---|---|
| モード | DP – Differential Pulse |
| 析出電位 | -0.1 V |
| 析出時間 | 30 s |
| 開始電位 | -0.1 V |
| 終了電位 | 0.2 V |
| 三価アンチモン Sb(III )のピーク電位 | 0.06 V |
- scTRACE Gold
図 2.
三価アンチモン(Sb(III))濃度が1 mg/Lの無電解ニッケルめっき浴液サンプルに対する定量は、30秒の析出時間、およびサンプル25 μLを10 mLの純水に加えた条件で実施されます。
30秒の析出時間により、本手法は希釈倍率を調整することで、無電解ニッケルめっき浴液サンプル中の三価アンチモン(Sb(III))を広い濃度範囲で定量するのに適しています。
| サンプル | Sb(III) (mg/L) |
|---|---|
| 三価アンチモン(Sb(III))を1 mg/L含有する無電解ニッケルめっき浴液 | 0.971 |