火力発電所の水–蒸気系における信頼性および安全な運転を確保するために、ボイラー給水中の鉄濃度はモニタリングされていなければなりません。
鉄イオンは、たとえ微量であっても腐食を引き起こすことがあり、安全上の問題を示唆する可能性があります。
そのため、さまざまなガイドラインにおいて、ボイラー給水中の鉄分濃度には上限値が設けられています。
ボイラー給水中の全鉄濃度は、錯化剤として 2,3-ジヒドロキシナフタレン(DHN)を用いた吸着ストリッピングボルタンメトリー(AdSV)により、高感度で測定することが可能です。
本手法により、水サンプル中の全鉄濃度は、約 0.1 μg/L の低濃度まで定量することができます。
AdSV(吸着ストリッピングボルタンメトリー)法は、操作が容易で、選択性が高く、干渉の影響を受けにくい分析手法です。
本分析法は、原子吸光分析(AAS)や誘導結合プラズマ(ICP)に代わる、より簡便で実用的な代替法であり、装置への投資や運用コストも低く抑えられます。
ボイラー供給水
図 1.
884 Professional VA.
ボイラー供給水サンプル、DHN 溶液および緩衝液を測定容器にピペットで移し入れます。
全鉄の定量は、表1に示すパラメータを用いて 884 Professional VA により実施します。
標準添加法を用いて濃度を求めます。鉄標準溶液の添加は2回行います。
| パラメーター | 設定 |
|---|---|
| 作用電極 | HMDE |
| モード | DP – Differential Pulse |
| 析出電位 | -0.1 V |
| 析出時間 | 30 s |
| 開始電位 | -0.2 V |
| 終了電位 | -1.2 V |
| 鉄(Fe)のピーク電位 | -0.7 V |
- 作用電極: Multi-Mode Electrode pro with standard glass capillaries
- 参照電極: Ag/AgCl/KCl (3 mol/L) reference electrode with electrolyte vessel. Bridge electrolyte: KCl (3 mol/L)
- 補助電極: Platinum rod electrode