航空タービン燃料には、天然に存在する有機化合物に由来する酸、あるいは精製工程における処理によって発生した酸が含まれている場合があります。これらの酸は、微量であっても有害であり、燃料システム内の金属部品を腐食させる可能性があるほか、燃料中の水分の分離性能に悪影響を及ぼすことがあります。
標準試験法である ASTM D3242 では、p-ナフトールベンゼインを指示薬として用いた滴定により、航空タービン燃料中の酸価を測定します。測定に先立ち、サンプルは 3 分間窒素ガスでパージされ、滴定中も窒素フローが維持されます。必要とされる滴定量が極めて少ないことに加え、滴定終点付近で指示薬の色変化が緩やかであるため、経験の浅い分析者にとっては測定精度の確保が難しい場合があります。
本アプリケーションでは、電位差自動滴定装置および オプトロード を用いて ASTM D3242 を完全自動化する方法説明しています。電位差自動滴定装置は脱気ボックスを制御し、窒素ガスフローを行わせた後、各滴定の終了時にバルブを閉じるようにしています。得られた測定結果は、ASTM 規格で定義されている測定精度基準を統計的に満たしています。
100 g ± 5 g のサンプル(ジェット燃料)を、0.5 g 単位までの精度で 400 mL ビーカーに秤量します。次に、ASTM D3242 に従って 100 mL の滴定溶媒と、p-ナフトールベンゼイン指示薬溶液 0.1 mL を加えます。サンプルに対して、水分、二酸化炭素を含まない窒素ガス(N₂)を 400~450 mL/min の流量で通気し始めます。溶液を連続的に撹拌しながら、3 分 ± 30 秒間通気して、溶液中の二酸化炭素を除去します。
滴定を開始し、分析終了までサンプルに対して N₂ 通気を継続します。滴定モードにはMET U(Monotonic Endpoint Titration mode)を使用します。
滴定装置は、ASTM D3242 に従って調製したアルコール性 KOH 滴定溶液を用います。その際、滴定液ステップ毎に、必ずセンサーの測定値が安定するのを待ちます。終点は滴定曲線に示されます(図 1)。
滴定終了時に、測定結果が表示され、窒素ガスの流れは自動で停止します。
No. (n = 5) |
平均値 Mean value [ mg KOH/g ] |
標準偏差 s(abs) [mg KOH/g] |
変動係数 [%] |
|---|---|---|---|
| 1 | 0.0219 | 0.0001 | 0.6 |
| 2 | 0.0478 | 0.0003 | 0.6 |
| 3 | 0.0839 | 0.0005 | 0.6 |