元の言語のページへ戻りました

尿素は生産量の90%以上が農業用の窒素放出肥料として広く使用されています[1]。尿素はまた、脂肪酸と複合体を形成することも知られていて[2]、これは複雑な混合物の分離や精製プロセスに採用されています[3]。このアプリケーションノートでは、ラマン分光法によるエタノール中の尿素濃度の定量を紹介し、ステアリン酸との固体包接化合物中の尿素の割合を決定するために、この方法がどのように採用できるかを紹介します[4]。

Find more information in the video:

化学物質:尿素 (Aldrich, >99% )、 ステアリン酸(SA) (Aldrich, >95%)、 エタノール(Soria)

装置:i-Raman® Plus BWS465-785

尿素(0.0420 gr/grエタノール)のストック溶液およびSA(0.04126 gr/grエタノール)の原液を調製しました。標準溶液は、尿素濃度が0~0.042gr/grエタノールとなるようにこれらのストック溶液をさまざまな割合で混合し、全質量濃度(尿素+SA)をほぼ一定に保って調製しました。各溶液 0.5 mL をアルミ容器に入れ、波長 785 nm のレーザー(出力 30%、~ 90mW)、積算時間 5000 msec(20 回繰り返し)でラマンスペクトルを測定しました。加熱や蒸発の影響は見られませんでした。BWSpec®ソフトウェアを用いてバックグラウンド補正した標準溶液のスペクトルを図1に示します。

図1. 標準溶液のラマンスペクトル(ダーク差分後ベースライン補正)

スペクトルは1049-1050 cm-1のエタノールバンドの強度を用いて正規化しました。正規化されたスペクトル(図2)は、尿素濃度の増加による顕著な変化が、尿素に起因する996-997 cm-1のバンドに生じることを明確に示しています。このバンドは対称的なC-N伸縮[5]に対応し、固体の尿素では約1010 cm-1で実験的・理論的に報告されていますが[6]、溶液ではより低い波数にシフトします[5,7]。

定量化のため、950-1200 cm-1の領域での実験結果を4つのローレンツ関数でフィッティングし、スペクトルをデコンボリューションしました。いくつかの標準溶液のカーブ・フィッティングの結果を図3に示します。996 cm-1(ピーク1a1)の尿素に該当するピークと1049 cm-1(ピーク2、a2)のエタノールに該当するピークのフィット強度比を分析パラメータとして使用しました。

この比率の尿素濃度依存性を図4に示します。この図にプロットされた検量線は良好な直線傾向を示しており、このパラメータが尿素定量に使用できることを示しています。尿素とSAの両方を含む実試料の尿素含有量を測定するために固体試料をエタノール(0.04299 gr/gr)に溶解し、同じ条件でラマンスペクトルを記録しました。この試料の996および1049 cm-1のピークのフィッティングによって得られた比 a1/a2の値から(図5)、溶液中の尿素濃度は0.03274 gr urea/gr ethanolでした。したがって、試料の尿素含量は76 % w/wになりました。この値はステアリン酸と尿素によって形成された包接化合物(約75 %)について報告された他の値と一致します[2,4]。

図2. エタノール中の尿素+SA標準溶液の正規化スペクトル(A)全範囲スペクトル (B) 分析範囲スペクトル
図3. 950-1200 cm-1領域のラマンスペクトルのフィッティング尿素30、尿素60、尿素100溶液はそれぞれ0.0123、0.0248、0.0413gr urea/gr ethanol
図4. エタノール中の尿素定量用の検量線標準溶液中の尿素含量に対しての尿素(a1)とエタノール(a2)のバンド強度比
図5. 試料スペクトルのフィッティング

本アプリケーションノートではラマン分光法を用いてエタノール溶液中の尿素濃度を定量する簡単な方法を紹介しました。検量線は、分析された濃度範囲(0.042 grurea / gr ethanol)で良好な直線性を示しました。試料中のステアリン酸の存在はラマンスペクトルに大きな変化を与えませんでした(少なくとも0.042gr/gr ethanolまで)。したがって、この方法では尿素とステアリン酸の両方を含む固体二成分試料中の尿素の定量が可能です。

We would like to thank Dr. Waldemar A. Marmisollé of the Soft Matter Laboratory INIFTA – Universidad Nacional de La Plata (UNLP), Buenos Aires, Argentina – CONICET for sharing these research results.

  1. J. H. Meessen, H. Petersen, in Ullmann’s Encycl. Ind. Chem., Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, 2000.
  2. H. Schlenk, R. T. Holman, J. Am. Chem. Soc. 1950, 72, 5001–5004.
  3. D. G. Hayes, Y. C. Bengtsson, J. M. Van Alstine, F. Setterwall, J. Am. Oil Chem. Soc. 1998, 75, 1403–1409.
  4. A. Strocchi, G. Bonaga, Chem. Phys. Lipids 1975, 15, 87–94.
  5. R. Keuleers, H. O. Desseyn, B. Rousseau, C. Van Alsenoy, J. Phys. Chem. A 1999, 103, 4621.
  6. B. Rousseau, C. Van Alsenoy, R. Keuleers, H. O. Desseyn, J. Phys. Chem. A 1998, 102, 6540–6548.
  7. D. Gangopadhyay, S. K. Singh, P. Sharma, H. Mishra, V. K. Unnikrishnan, B. Singh, R. K. Singh, Spectrochim. Acta Part A Mol. Biomol. Spectrosc. 2016, 154, 200–206.
お問い合わせ

メトロームジャパン株式会社

143-0006 東京都大田区平和島6-1-1
東京流通センター アネックス9階

お問い合わせ