AN-RS-001
2025-02
ラマン分光法を用いた高分子(ポリマー)材料の識別・同定
Rapid, nondestructive determination of colored plastics
概要
ラマン分光法は高分子材料の分析において高い精度を有していますが、着色プラスチックの識別においては、顔料や添加剤に起因する蛍光の干渉により、正確な判別が困難となる場合があります。そのため、これらの条件下では高分子材料の識別結果の信頼性が低下する可能性があります。
複数の励起波長の活用、充実したリファレンスライブラリの整備、さらには先進的な解析技術の導入により、ラマン分析の信頼性は大きく向上します。Metrohm社のラマンソリューションは、これらすべての機能を備えており、高速かつ高精度な高分子材料の識別を可能にします。
本アプリケーションノートでは、強い背景蛍光が重畳するスペクトルからラマン信号を抽出(eXTRact)することで物質識別の精度を高める、メトロームの先進的なXTR®技術を説明しています。いくつかの種類の着色ポリマーを対象に、785 nmラマン分光法と新規XTR蛍光除去技術の併用による有効性を検証しています。
はじめに
本アプリケーションノートでは、ラマン分光法を用いて、着色プラスチック中のポリエチレン-酢酸ビニル共重合体(PEVA)、ポリスチレン(PS)、およびポリプロピレン(PP)を識別する手法について紹介いたします。
ハンドヘルド型のMIRA XTRラマン分光計による測定は、サンプルの前処理を必要とせず、迅速かつ明確な結果を即座に得ることができます。XTRアルゴリズムの適用と、それに続く自動ライブラリ検索により、高速かつ非破壊的な判別が可能となります。
測定
すべてのスペクトルは、波長785 nm、軌道ラスタースキャン技術(Orbital Raster Scan Technologie, ORS™)機能、および自動取得モードを用いて、MIRA XTRにより測定されました。蛍光の重畳が認識されると、XTRアルゴリズムが自動的に作動し、ベースライン補正された高分解能のスペクトルが得られます。
本測定で使用したすべてのサンプルは、一般的な家庭用品およびオフィス用品であり、インテリジェント・ユニバーサル・アタッチメント(Intelligent Universal Attachment, iUA)を用いて直接接触による測定を行いました。
メトロームの違法性および一般化学物質ライブラリー(Illicit and General Chemicals Library)は、混合試料の正確な識別を可能にした、一般的な物質のスペクトルを網羅した包括的なデータベースです。本測定では、各サンプルをMIRA Calソフトウェア上で本ライブラリを用いて識別しました。図1には複数の高分子標準物質のラマンスペクトルを示しており、それぞれが明確な指紋スペクトルを有していることが分かります。
測定結果
さまざまな色の未知高分子で構成された複数の物品のラマンスペクトルを収集し(図2)、MIRA違法性および一般化学物質ライブラリと照合いたしました。
測定結果は数秒以内に装置上に、試料名、CAS番号、およびHQI(ヒットクオリティインデックス:試料スペクトルとライブラリスペクトルの相関強度を示す指標)が表示されます。図3では、サンプルのスペクトルとライブラリスペクトルの比較により、色の濃いサンプルから収集されたデータの高い精度が示されております。